第6回 音楽プロデューサー川瀬泰雄 特集
<2016年6月19日前編、26日後篇放送>
オーガナイザー:濱口英樹(歌謡曲愛好家)
《第6回 音楽プロデューサー川瀬泰雄 特集》
この番組ではアーティストだけでなく、作家やディレクターなど、制作スタッフの方もゲストにお迎えし、歌謡曲の魅力を探ってまいります。今回はその第3弾、音楽プロデューサー川瀬泰雄さんにご出演いただき、前編後編の2回に渡って、これまでの活動、そして作品を紹介していきます。
《午前0時の歌謡祭アーカイブ》
第6回放送 川瀬泰雄特集(前編 2016.6.19 /後編 2016.6.26 OA)
この番組ではアーティストだけでなく、作家やディレクターなど、制作スタッフの方もゲストにお迎えして、歌謡曲の魅力を探ってまいります。今回はその第3弾。伝説の歌手・山口百恵のほぼ全楽曲の制作に携わったほか、井上陽水や浜田省吾など数多くのアーティストを担当してきた音楽プロデューサーの川瀬泰雄さんをゲストにお迎えし、ヒット曲誕生の背景や作品に対する想いなどを伺いました。その川瀬さんは大学を卒業後、ホリプロ(東京音楽出版)に入社。以後、キティレコードを経て、フリーのプロデューサーとして活躍され、今までに40組以上のアーティストを手がけられています。
・
川瀬泰雄 特集-前篇(2016.6.19 OA)
特集の前篇にあたる今回は、リスナーから寄せられたリクエストをもとに、山口百恵の作品に関するお話を伺いました。
01.「乙女座 宮」山口百恵(1978)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
前篇の山口百恵特集はリスナーから多くのリクエストを集めた21thシングルでスタート。♪今は獅子座のあなたに夢中よ~ と歌う百恵ちゃんに、全国の獅子座男が誇らしく思った作品です。実はオーガナイザー・濱口も獅子座生まれ。作詞を手がけた阿木燿子氏に取材をした際、その理由を尋ねたところ「12星座の中で、字面も語感も一番格好良かったから」との回答が寄せられました。
・
BGM.「としごろ」山口百恵(1973)
作詞:千家和也 作曲・編曲:都倉俊一
オーディション番組『スター誕生!』(NTV系)第5回決戦大会で13社からスカウトを受けた山口百恵は、この曲で歌手デビューを果たします。なお本作のサブタイトルは「人にめざめる14才」。キャッチフレーズは“大きなソニー、大きな新人”でした。
・
02. 「ひと夏の経験」山口百恵(1974)
作詞:千家和也 作曲:都倉俊一 編曲:馬飼野康二
デビュー2年目の夏に発表された5thシングル。自身初のオリコンTOP3入りを果たし、年間でも15位のビッグヒットとなりました。前年リリースの2ndシングル「青い果実」から始まった“青い性路線”はこの曲でピークを迎え、当時15歳の彼女にレコード大賞大衆賞をはじめ数々の音楽賞と、紅白歌合戦初出場をもたらします。
・
03.「冬の色」山口百恵(1974)
作詞:千家和也 作曲:都倉俊一 編曲:馬飼野康二
しばらく続いた性典ソングから一転、7thシングルでは少女の純愛を切々と歌い上げ、初のオリコン1位を6週連続で獲得。同時期に公開された東宝映画『伊豆の踊子』も大ヒットを記録し、この頃より「芯の強い健気な少女」というイメージが浸透しました。今回、リスナーの皆さんから最も多くのリクエストを集めたのが本作です。
・
BGM.「横須賀ストーリー」山口百恵(1976)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
「青い果実」でのブレイクをホップ、「冬の色」の大ヒットをステップとするなら、宇崎竜童・阿木燿子夫妻と出会ったこの13thシングルは、歌手として大きな飛躍を果たした楽曲といえるでしょう。自身2作目となるオリコン1位を7週連続で獲得し、年間8位を記録した本作はもともとアルバム用に制作された楽曲でしたが、あまりの素晴らしさに急遽シングルとしてリリースされました。
・
04.「プレイバックPart2」山口百恵(1978)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
あまたのヒット曲を有する山口百恵の中でも代表作と言っていいのが、22ndシングルにあたる本作。♪バカにしないでよ~ のフレーズは一世を風靡し、オリコン最高2位、年間15位の大ヒットを記録しました。ちなみにこの年スタートしたTBS系『ザ・ベストテン』では15週連続でベストテン入りを果たし、年間5位をマーク。暮れの紅白ではこの曲で史上最年少のトリを務めて大きな話題となりました。
・
05.「曼珠沙華」山口百恵(1978)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
シングルA面ではないものの代表作の1つに挙げられるのが、78年リリースの同名アルバムに収録された本作。リスナーからも多くのリクエストが寄せられました。聴きどころは宗教的な世界観を漂わせる深い歌詞と、サイケデリックロックを思わせるアレンジ。阿木+宇崎+萩田+川瀬のゴールデンカルテットによる最高傑作といっても過言ではありません。
・
06.「銀色のジプシー」山口百恵(1978)
作詞:横須賀恵 作曲:浜田省吾 編曲:萩田光雄
アルバムも名盤揃いの山口百恵とあって、番組にはシングル曲以外にも多くのリクエストをいただきました。その1つが78年発売の14thアルバム『COSMOS(宇宙)』に収録された本作です。作曲は川瀬さんが“愛奴”時代から担当していた浜田省吾で、百恵さん自身もお気に入りの曲。川瀬さんの薦めもあって、“横須賀恵”のペンネームで作詞家デビューを果たしました。
・
07.「GET FREE」山口百恵(1979)
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:Barry Fasman
79年にリリースされた18thアルバム『L.A. BLUE』のオープニングナンバー。ロサンゼルス録音盤にふさわしいウェストコースト調の軽快なロックチューンで、山口百恵の新しい魅力を訴求する楽曲に仕上がっています。ヒットが至上命題となるシングル盤と違い、アルバムでは新たな冒険や挑戦をする場として、若い作家も積極的に起用していた川瀬さんですが、本作では「夢の途中」でブレイクする前の来生姉弟をキャスティングしています。
・
08.「さよならの向う側」山口百恵(1980)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
特集の最後を飾ったのは、引退直前にリリースされた事実上のラストシングル。6分以上におよぶ壮大なバラードで、この曲をもって7年5ヶ月におよぶ歌手人生に別れを告げました。80年10月5日に日本武道館で開催されたさよならコンサートで、本作を歌い終わった後にマイクを置いてステージを去るシーンは今なお伝説として語り継がれています。今回はその武道館のLIVEバージョンをお届けしました。
・
《イントロクイズ解答》
・
「ささやかな欲望」山口百恵
・
「赤い衝撃」山口百恵
・
「夢先案内人」山口百恵
・
「いい日旅立ち」山口百恵
・
「謝肉祭」山口百恵
・
・
川瀬泰雄 特集-後編(2016.6.26 OA)
6月は、山口百恵、井上陽水、浜田省吾など、約40組のアーティストの楽曲をプロデュースしてきた音楽プロデューサー・川瀬泰雄さんをゲストにお迎えしました。特集の後篇にあたる今回は、井上陽水やザ・モップスなどフォーク&ロック系の楽曲や、ホリプロタレントスカウトキャラバン出身のアイドルポップスなど、幅広いジャンルの作品を紹介。また川瀬さんの近著『ニッポンの編曲家』にちなんで、楽曲制作におけるアレンジの重要性についてもお話を伺いました。
・
01.「帰ってきた港のヨーコ」Economic Animals(1975)
作詞・作曲・編曲:Economic Animals
川瀬さんが音楽仲間である佐々木勉(作曲家)や鈴木幹治(ザ・モップスのドラマー)と共に覆面バンドとして発表した本作は「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のアンサーソングとして評判となり、オリコン最高22位のヒットを記録。本家のリリースからわずか46日後に発売という驚異的なスピードで制作されたことも話題となりました。
・
BGM.「男の世界(LOVERS OF THE WORLD)」ジェリー・ウォレス(1970)
作詞・作曲:M.ケイン H.ケイン
川瀬さんが関わった作品で初のオリコン1位を獲得したのが、男性化粧品のCMソングとしてお馴染みの本作でした。米国のカントリー歌手、J.ウォレスが歌っているものの、楽曲は日本オリジナル。チャールズ・ブロンソンが出演した「ウ~ン、マンダム」の映像と共に一世を風靡しました。
・
02. 「月光仮面」ザ・モップス(1971)
作詞:川内康範 作曲:星 勝 編曲:ザ・モップス
ホリプロの音楽制作部門である東京音楽出版に配属された川瀬さんが自ら「担当したい」と手を挙げたのが、ザ・モップスでした。日本のサイケデリックバンドの草分け的存在といわれる彼らですが、当時は60年代末のGSブームが去ってセールスが低迷。川瀬さんが担当した本作はオリコン最高18位をマークし、彼らにとって起死回生のヒットとなりました。
・
03.「夢の中へ」井上陽水(1973)
作詞・作曲:井上陽水 編曲:星 勝
69年に“アンドレ・カンドレ”名義でデビューして以来、なかなかヒットに恵まれなかった井上陽水が初めてオリコン20位以内にランキングされた作品です。川瀬さんはデビュー時から井上のマネジメントも担当。いわば盟友ともいえる間柄で、『氷の世界』『二色の独楽』など名盤を次々と送り出しました。
・
BGM.「子守唄(ララバイ)」山口百恵(1980)
作詞:阿木燿子 作曲:佐々木勉 編曲:田辺信一
山口百恵最後の主演映画『古都』の主題歌で、オリジナルサウンドトラック盤に収録されたナンバーです。作曲の佐々木勉は「夏のお嬢さん」(榊原郁恵)や「3年目の浮気」(ヒロシ&キーボー)等のヒットでも知られた存在ですが、川瀬さんにとっては同じホリプロ所属の先輩プロデューサーでもありました。
・
04.「東京の空の下あなたは」山口百恵(2003)
作詞・作曲:天野 滋 編曲:加藤ヒロシ
77年発売の12thアルバム『GOLDEN FLIGHT』用に発注された本作は、レコーディングまで完了していたものの、ロンドン録音盤の雰囲気に馴染まないとの理由で収録が見送られたいわくつきの曲。当時のコンサートでは披露されていたものの、お蔵入りのままとなっていましたが、2003年にリリースされたBOX企画『MOMOE PREMIUM』のボーナストラックとして日の目を見ることに。2005年に早逝した天野 滋は生前、CD化されたことを非常に喜んでいたといいます。
・
05.「渚でクロス」荒木由美子(1977)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:馬飼野康二
76年に開催された「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞を受賞した荒木由美子のデビュー曲。グランプリは榊原郁恵が獲得したものの、その美少女ぶりと確かな歌唱力で注目を浴び、スマッシュヒットを記録しました。
・
06.「アテンション・プリーズ」能瀬慶子(1979)
作詞:喜多條忠 作曲:浜田省吾 編曲:船山基紀
第3回ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝し、天真爛漫なキャラクターで人気を集めた能瀬慶子のデビュー曲。作曲は川瀬さんが担当ディレクターだった浜田省吾、作詞は「神田川」(かぐや姫)などのヒットで知られる喜多條忠が手がけており、アイドルポップスとしては異例のキャスティングも話題を呼びました。
・
07.「待ちぼうけ」堀ちえみ(1982)
作詞・作曲:竹内まりや 編曲:鈴木 茂
第6回ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝した堀ちえみの3rdシングル。デビュー当時15歳だった彼女の純真な魅力に着目した川瀬さんは少女性を前面に立てた作品をプロデュース。本作では山下達郎と結婚したばかりの竹内まりやを起用し、あどけないイメージの浸透に成功しました。
・
08.「想い出がいっぱい」H2O(1983)
作詞:阿木燿子 作曲:鈴木キサブロー 編曲:萩田光雄
ホリプロから独立した川瀬さんはキティグループを創業した多賀英典に請われてキティレコードに所属。そこで最初に放ったヒット曲が本作でした。人気アニメ『みゆき』(フジテレビ系)のエンディングテーマとして、オリコン最高6位(年間20位)の大ヒットを記録しています。
・
09.「もっとHurry Up!」姫乃樹リカ(1988)
作詞:松井五郎 作曲:松田 良 編曲:萩田光雄
酒井法子や西村知美を輩出した『モモコクラブ』出身の姫乃樹リカは、88年にアニメ映画『めぞん一刻 完結編』の主題歌に起用された「硝子のキッス」でデビュー。アイドル性と歌唱力の高さで注目され、3rdシングルの本作はオリコン最高24位のスマッシュヒットを記録しました。
・
10.「アポカリプス・ラブ」山口百恵(1980)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
2016年3月に共著作『ニッポンの編曲家』を出版された川瀬さんが「アレンジが印象に残る曲」として挙げたのが、山口百恵の20thアルバム『メビウス・ゲーム』に収録された本作です。前年に公開されて世界的ヒットを記録した映画『地獄の黙示録』に着想を得て制作されたそうですが、スタジオではヘッドアレンジ(楽譜によらずに、口頭で指示する方法)でレコーディングされたとのこと。番組ではその時の様子をありありと語ってくださいました。