岡ななみの歌謡曲ア・ゴー・ゴー⑩
初 戀/斉藤由貴
文/岡ななみ
1985年8月21日発売
斉藤由貴さん
「初戀」
作詞・松本隆さん
作曲・筒美京平さん
※ いつにもまして思い込み・深読み・願望が暴走しているのでご注意ください ※
斉藤由貴さん3枚目のシングル。
まずタイトルの初戀の漢字。
「戀」
“いとしいとしと言う心” ですね。
小林旭さんの「ノーチヨサン節」(作詞・西沢爽さん)で覚えました!
どういう意図でこの漢字を用いたのか知りたい。
「恋」よりも文学的な匂いがして好きです。
「戀」の漢字の意味を調べると、
“いといとしく思い、そういった心が言葉になって出ない”
という記述を発見しました。この歌詞にぴったりなこと!
ただの
【甘酸っぱい初恋を歌った可愛いアイドル曲】
に収まらない、とても深い歌詞が好きです。
女性アイドル片思いソングによく出てくる、
好きな彼の似顔絵を描くという可愛い行動から始まる歌い出し。
そこからもう、さすがです。
書きかけというのも、何度も消すというのも、
忘れようとするいじらしさが感じられます。
しかし、彼を含む友人グループで映画を観に行き、
“さりげなく”隣に座ることのできる女の子なのです。
斜め後ろから見つめているだけ…なんていうタイプではなく。
応援したくなりますね。
この男の子は、古文とか得意な、
心の機微を感じ取ることに長けてる文系男子で、
優しい眼差しだけれども真意を汲み取りにくい瞳が印象的だと推測。
ちなみに私の脳内では、俳優の田中圭さんに演じていただいております(笑)
その人物像を感じたフレーズ。
♪♪初戀 隠した秘密もあなたには読まれてしまう♪♪
♪♪横顔に視線を感じて 振り向くとあなたが見ていた♪♪
なになに、何を思って見ていたの!!!
自分の視線に気が付いて頬を染める女の子。
それでも何も言わない男の子。
片思いなの?男の子側に好意は無いの?
それが全く読み取れないところが、良い!!!
どういうことなの?とやきもきするのも片思いの楽しみの一つでしょう。
そしてそして!!
私が最も衝撃を受けたフレーズ!!
♪♪つき合った人はいたけれど
こんなには深くなかったわ♪♪
これで一気に印象変わる!
純粋な女の子が、男女混合仲良しグループの中の彼に初めての恋心を抱き、
片思いをしている……そんな単純なものではなかった!
初めて人を好きになる、それが初恋。
初めて人を本当に好きになる、それも初戀。
彼女もきっと、以前付き合っていた時には、
その彼が本当に好きだったのだと思います。
しかし、今の意中の彼を知り、こんなにも人を想うことができるのね!
と自分史上最大級の愛情を感じ、これが初戀だとわかったのだと私は解釈します。
以前の恋愛は、子供の恋愛だったのかも知れませんね。
あるいは、好きだと言われ、何となく自分も好きだし良い人だから付き合っていた
相手発信の恋愛で、まだ自分発信の本当の深い恋心を知らなかっただけだったのかも。
♪♪何気ない 話をしても
溶けそうな 幸福が怖い♪♪
ここのフレーズも大好きです。
そんな人が、いるんですよね。
人と人との相性って不思議なもので、片思いだとしても、
(この人と会って、話しているだけで、とっても幸せ…!)と感じる人がいる。
その感情に “溶けそうな幸福が怖い” という言葉を選ぶ美しさよ。
本当の恋心を自覚した女の子、ということを踏まえて聴くと
サビのフレーズがより効いてきます。
♪♪好きよ 好きです 愛しています
どんな言葉も違う気がする
初めての気持ち♪♪
本当に本当に好きな人って、ただ好きだとか愛だとかというだけでは表現出来ない、
もっと複雑に入り組んでいるものなのですね。感覚なのかも。
言葉にできるうちはまだ戀と言えないのかも。
♪♪好きよ 好きです 愛しています
そんな言葉じゃ伝えられない
夢 見てる瞳♪♪
また瞳だ!
視線だったり、視覚が重要なポイントなのだろうか。
この彼は、一体何を思い何を見つめていたのか、気になるところです。
斉藤由貴さんのような美少女が自分のこと意識していると勘づいたら、
そりゃあもう、めちゃくちゃ見まくりますよね!(笑)
いや、彼はそんな単細胞な男の子じゃない。
実は女の子の好意には全く気が付いていないけれど、
同じように、この子といると幸せだな、と感じて優しい瞳で見つめている……
としたら可愛らしいな。
そうあって欲しいと願う、
青春時代はとうに過ぎ去った岡ななみでした。